ゲージツ日報

小学館児童出版文化賞を受賞しちまっただ 名前: 無名 [2009/09/10,23:23:00]

<小牧橋>を渡り、二本目の農道を左に曲がった。イチゴジャム工房への矢 印。竹刀袋を背に袈裟掛けにした稽古着姿でゆるやかな坂を登っていた。しかしジャム工房も見付からないまま、また左に曲がるとすぐに途切れそうになった。それでもここまではよかった。
しかし鏡は魔界の入り口である。もと畑だったらしい草深い田園に、唐突に建っていた妙な装置は、何のためだが分からない。嵌っている鏡に<甲斐駒ヶ岳>が左右反対に映っていた。それを横目にみて『少し早いし、遠回りでもイイか』と、林の 中へ這入っていった。引っ返すには遠くまで来過ぎてしまったわい。
道はなくなり獣が踏みしめた細い道だけになり、オレの背丈を超す草むらである。そしてウッソウとした森になっていた。剣道袴はこんな藪を歩くには向いてない。足首はイバラで傷だらけ。顔は蜘蛛の巣だらけ、蛾や小バエが張りつ いて大変なことになった。往けども往けども森は深まっていく。後悔してもはじまらないからそのまま掻き分け掻き分けなんとか進んでいた。そしてやっとガードレールが見えた。
何とかよじ登ったら甲斐駒が目の前に現れた。
今日の箕輪道場の稽古もオレは素振り摺り足。肩胛骨を意識し汗だくになった。
何とオレが書いた初めての児童小説[走れUMI]が大変な賞を受賞してしまった。
[小学館児童出版文化賞]の最終選考に残っていたのは聞いていたが、今日はその発表日だったのはすっかり忘れていた。箕輪道場から戻って稽古着をのんびりと水洗いしていた。藍染めははじめのうち藍が落ちて身体は真っ青になる。タライの水に浸け足で踏み洗いしていたら、マネージャーからの電話だ。「今、事務局から電話があって、ジュジュジュ受賞してってよ」。
公の賞なぞ無縁にきた人生だったから、どう嬉しがったりしてイイものやら。取りあえず、今朝から出ずっばりでいてくれた<甲斐駒>に挨拶したら、ちょっと嬉しくなってきた。いま取り掛かっていく二作目に少しはずみがつくかなぁ。


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甲斐駒登はん記 名前: 無名 [2009/08/21,06:31:10]

七月一五日午前一時、大枚一万円也の筋肉負荷下着に、オレは自分の下肢を押し込みはじめた。登山なぞ初めてのことだ。完全装着し終わったときは、筋肉も気も引き締まりマッキンリーだって不可能ではなかった。甲斐駒嶽神社に三時半、今橋宮司から鉢巻きと白装束、鐘をいただき御祓いを受ける。四時三五分、宮司とサポーター等と神社裏の登山道から登りはじめた。筋肉負荷下着のせいかオレは、足首に翼が生えたアキレスみたいに軽く登っていた。
四月一日から制作開始した[ゆら水]は、三〇〇トンのコンクリートでつくった三次曲面で、力強い稜線の甲斐駒嶽を鋳込むというモニュメントだ。そして八割方仕上がった[ゆら水]から七月一六日の早朝、甲斐駒山頂めがけてマコトやユイ、ユカリ、ヤス等にヒカリ放ってもらう。そして頂上に辿り着いたオレが、本社に草鞋と自分で炊いた十六穀ご飯の握り飯と一緒に、そのヒカリを奉納するのが登山目的である。
軽快だった一合目も中頃からオレの身体に異変が始まった。下半身に感じる得体の知れない重みは、日常的な平地ではないせいだろうと思った。七時一〇分、何とか喘ぎながら二合目の〈水飲み場〉に到着した。それぞれ朝食を摂るがオレには食欲がない。岩清水を馬みたいに飲んで出発だ。やっぱりイカンぞ。それでも〈横手・竹宇分岐点〉1450M。戻るか、進むかの分かれ道だ。進むを選択。すでにビショビショになった筋肉負荷下着の下半身は、オレの身体とは思えなくなっている。オレはやっぱりアキレスなどではなく、五分も登らないうちに立ち止まるようになった。すぐ前を行く今橋宮司が、九字護身法を切っては励ましてくれるのだが、それも効かないほど脚がしびれて、ついに地面に倒れた。痙った二頭筋に「エイ」、また九字を切る。「そんな下着を脱げ、お前には似合わない」頭蓋の何処かに男でも女でもない優しい声がしたのは、気付きだっただったのか、皮をめくるように張りついた負荷下着を剥がしてた。血が巡りだしいつもの自分が戻ってくるようだ。サイズが合わなかったのだ。『もう大丈夫だ』。一五七〇m〈黒龍神〉。宮司と一緒に般若心経を読経、ここまで引き上げてくれた事への感謝と頂上への導きを祈願する彼の言葉が殊更に染みた。オレは別人になったようだが、最初のダメージは大きい。一九一〇m胸突き八丁の〈摩利支天〉。昼食だがオレに食欲戻らず。一九七〇m〈刃渡り〉。二〇四〇m〈刀利天狗〉。もうオレであってオレではなく何んの言葉も喋りたくない。霊山だから奉られた神様がいっぱいで、その都度に米、塩とお経をあげていく。〈前屏風岩〉二一〇〇m。もうヨレヨレだ。すでに予定時間は大きく遅れ十六時十五分〈後屏風〉。七合目の〈七丈小屋〉に着いたのは出発から十三時間かかった午後五時三十分だ。普段絶対に口にしないカップヌードルの夕飯。八時過ぎに消灯、寝静まる。十二時に眼を覚ますと暗闇にオトコ等の寝息の輪唱だ。三時まだ暗いうちに出発だ。
四時三十六分、東の夜空が裂けてたちまち燃えるような日の出だ。この瞬間、オレはまだ天動説の方を信じた。富士山も北岳も、眼下の甲府も武川の粒々の屋根屋根もクッキリ見えはじめた。「こんな天気は私も初めてです。十年に一度あるかどうか」宮司の目にも御来光が映っていた。「奇跡だ」二六六〇mの天空で見渡している蒼空の果てと、繋ぎ目なしでひと続きになっている自分を実感していた。七時四〇分、二九六七m。〈頂上本社〉にお礼のお参り。握り飯と草履を奉納すると、大武川と釜無川が黄金の龍のように輝きだした。八時一五分、合流点が龍の眼のようにピカピカ光り出すではないか。人影までは見えないが、懸命に大鏡を支える若い衆等が居る筈だ。
オレを掠めたヒカリが社に命中し、馬頭観音の顔が微笑んだ。ついに[ゆら水]の完成である。



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[YURAMIZU]制作中 名前: 無名 [2009/05/12,04:18:23]

現在、山梨県の大武川と釜無川の合流点に、250トンのコンクリートと4トンの鋼鉄を使って[YURAMIZU]制作の真っ最中。この日々の様子はブログ、<KUMAの見どころ>は、毎日4,5回更新している。
ホームページからアクセスするには、トップページの<ブログ>からどうぞ。
アドレスは
http://yaplog.jp/kuma-midokoro/
です。
そんなわけで、<ゲージツ日報>はしばらく開店休業状態です。



無題 名前: 無名 [2009/01/04,00:47:23]

明けましておめでとうございます
装飾的皮膜を紙ヤスリで剥がすと、ブリキの小箱が現れる。
これをバーナーの火炎で塗装の記憶すら灼きつくし、機能を無くした鉄片を拾って組み込んだ。
鋳型に流し込んだ鉄や硝子で、闇やヒカリのカタマリを創ってきた。
山岳の自然水五トンを巨大な鉄枠に取り込んで、零下二〇℃の大気で凍らせて創った<水のオブジェ>を、春の山に見送ったこともあった。
二〇〇九年は、三〇〇立米のコンクリートと、十三トンの鉄筋でモニュメントを創るKUMA’S PROJECT。
牛、走る。
今年もよろしく


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走れUMI 名前: 無名 [2008/10/16,20:08:06]

モンゴル草原のど真ん中に巨大な鉄のオブジェを建てに遠征したことがある。
羊や馬の脚以外に大草原で垂直に立っているモノを見たことがない現地の子どもらは、吹きだす汗をたちまち塩にする見慣れないスキンヘッドが、鉄と格闘している様子を不思議そうな顔で遠巻きにしていた。
何日かすると恐る恐る近づいて来たひとりの少年がいた。オレは身振り手振りで水が飲みたいと言うと、彼は引き返すや家からヤカンとコップを持って戻ってきた。すぐ後ろにはニコニコした子どもらがウヨウヨ湧いてきて、やがて小さな男の子がオレの身体をよじ登り始めた。
扱いなど慣れてない子どもに囲まれ途方に暮れたオレは、「オー」と叫びながら両手を掴んで一人ずつ振り回していた。子どもらはキャキャと、これまで出会ったことの無い大きな異形に全身でぶつかってきた。
オレは子どもだからと言って容赦はしないけど、子どもの直感力や想像力を甘く見たりもしない。
そんなオレが、今年2月から少年の物語を半年間かかって書いた

●<走れUMI> 講談社刊 10月16日発売  1,300円(税抜き) 

ヨロシクね。



頭蓋浮遊 名前: 無名 [2008/09/23,18:47:21]

台風崩れの雨。朝10時開館にあわせて世田谷美術館。
ダニ・カラヴァン展と、アウトサイダー・アート展を観にいく。砂漠の風の音が流れていた客もまばらな館内、カラヴァ
ンのオブジェ群を眺めなるオレの頭蓋は、たちまち、サハラ砂漠に遠征して鉄のオブジェを建てた10年前にトリップしていた。
そのままアウトサイダーの絵画展に繋がっていった。朝の真新しい頭蓋にパラレルな色を入れるのは心地よい。
雨の隙間を着いてテアトル新宿へ。待ちに待った[アキレスと亀]である。
館内の暗がりで補聴器と眼鏡を装着して開演を待つ。
主人公・真知寿は飼い馴らされることのない動物<バカボンのパパ>だ。そして樋口可南子はパパの言うとおりに従う家庭的な<バカボンのママ>である。
娘は身体を売ったゼニさえ、バカボンのパパの絵の具代に取られてしまい、命まで亡くしまうケナゲな<ハジメちゃん>か、いや<バカボン>かな?満席の観客に、真知寿の性懲りのない創作活動に笑いが蔓延していた。
オレも暗がりに拡がる切ない滑稽の世界に、久しぶりに笑った。読み違いかもしれないが、奇しくも先日亡くなった赤塚不二夫の [天才バカボン]と重ねていたのだ。
ゴダールを越えてしまった意表をつく真知寿のラスト。北野監督のこれからの強い覚悟さえ感じた。
「それを買うわ」ラストの樋口可南子の<ママ>は絶品だ。いつもながら、潔いカットの省略や、暴力的な色が美しいも哀しい。
[アキレスと亀]は、KITANO映画第一期の集大成だと思う。第一級の新しいギャグ映画だった。
北野武はやっぱり天才監督である。また始まっていく第二期が待ち遠しい。


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死にながら生きている 名前: 無名 [2008/07/29,20:40:33]

尻が傷んでいた桃を棄てたら、さっそく現れたカブトムシが食らいついていた。メスのカブトムシはズンズン這入りこんで一晩中、桃源郷のなかで過ごしたようだった。
朝になると桃は種だけになり、5センチずれたところで赤い山蟻が盛り上がってカブトムシは埋まっているようだった。蟻の隙間から出た肢を動かしてはいた。
もう朝の位置から10センチほど夕方になっていた。カブトムシの腹が波打っていた。まだ生きていたか。
腹の中に赤い山蟻がつまっていて、桃の味がするカブトムシの内部を貪っているのだろう。
山岳は,[死にながら生きている]




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土砂降りのオレと亀 名前: 無名 [2008/06/23,20:02:24]

岩塩を買いに土砂降りの農道をボンヤリと歩いていたら、田んぼのあぜ道を土亀がノロノロと歩いていた。ノロノロはしているけど拳ほどの甲羅は休まず歩いていた。野性の亀なんて久しぶりに見た。
傘をさしたヒマなオレは、亀の後をついていこうと思った。しかしせっかちなオレはつい亀を追い抜いてしまう。
100メートルのハンデを持ったアキレスが、無限に亀を追い抜けないの話しを最初に聞いたのは中学の時だ。社会科の時間だった。特攻隊帰りの代用教員が、何の切っ掛けだったか黒板に引いた白墨の線上に、アキレスと亀の位置を描いて話しが始まった。
アキレスが追い着いた時は、亀もすでに何ミリかは進んでいる。アキレスが次にその何ミリか先に着くと、亀はやっぱり0.0何ミリ先かは行ってる。こうしてどこまで行ってもアキレスは追い越せないという話しに、ボンヤリ者だったオレでも『そんなバカな』と思った。下校途中、黒板の図解を思い浮かべ不思議さに吐きそうになった。
大きくなってからあの謎が、有名な<パラドックス>のひとつであることも知った。でもあの代用教員が社会科の時間に突如、喋りだした事の方が謎だった。
線は無限の点で出来ているというのがミソなのかなぁ…。その点は幅も無いんだったなぁ…。パラドックスを考え始めると、やっぱり目まいがすることに変わりない。
稲妻まで走り出した。アキレスではないオレは、土亀を跨いで<道の駅>に急いだ。雨の中でいっそう鮮やかな<赤>は石榴の花だ。



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三宅島釣行 名前: 無名 [2008/06/12,23:09:52]

山籠もりでの<少年海洋小説>の執筆もやっと目処がついた。やれやれ。
そんな時にSHIMANOの『FISHING CAFE』連載の取材で三宅島、一年半前、六〇kg弱のカンパチを仕留めた記録を作った海だ。
今度は、釣り名人・高橋テツヤとマダイ釣りである。初日はテツヤが四kg、五kgのマダイを釣り上げていたけど、オレは巨大五、六kg級のメジナばかりで、ついにマダイは来なかった。このままで終わらない…。
翌朝、梅雨の合間につかの間の快晴だ。『なんだか胸騒ぎがする鯛日和…』
紅の身体にターコイス・ブルーのライフカラーが美しく映える巨大マダイを予感する。最初、やっぱり巨大なメジナばかりだった。これが釣れなくなる一瞬が、巨大な王者の登場だ。
附けエサが無傷のまま上がってくる。そろそろ、マダイが近づいているはずだ。八時半すぎ、タナより数メートル下まで降ろし、ゆっくりしゃくり上げた。
GAAA−N!!!
予感したとおり、オレのロッドが海に刺さった。巻いても巻いても、リールから引き出されるライン。こりゃ大きいぞ。
激闘十五分…。ブクブクと海面に盛大な泡が湧き、炎天に反射したメタリックな紅の魚体に、海全体が光ったような気がした。オレは物語の再現のような釣りをたっぷり楽しんだ。
「デカッ」
8kgはゆうにあるマダイである。また山に戻って、エッチングで表紙を描くか。



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カラフルな世界 名前: 無名 [2008/06/02,14:29:03]

<誰でもピカソ>の収録で三年ぶりのフジコ・ヘミングさんの登場。控え室で彼女のキスマークつきのサインを入れたきれいな画集をいただいたのは序の口だった。
<ラ・カンパネラ>ではなく、目の前でのピアノ演奏はベートーベンの<テンペスト>。シェイクスピアの戯曲ということしか知らない教養のないオレの身体の芯に、ピアノの柔らかいカラフルな音が洪水のように流れ込んできた。何という音色。
<感動>することから遠ざかっていたオレにも、久々に<美しい>ことについ胸苦しいさを覚えてしまった。
続いて上原HIROMIさんのピアノ。一本のリボンがカラフルに変色しながら、しかも物凄いスピードで入り組んでいく。それでもこんがらかることはない明るいエキサイティング。新しい音のメディアを創りあげていた。(6月27日放送)
<美しい>モノが溢れないように、静かにアズサの夜汽車に乗って山岳の工場に戻った。海の少年小説を書いている。もう終盤に来ているのだが、気分転換といってもルーペで覗く林の景色ばかりだ。
勢いを増しているイチジクの木に、今年は実が少ない。どうしたことかと調べると、木の所々に細かいオガ屑が樹脂とともに流れ出している。その上に小さな穴が開いているじゃないか。こりゃテッポウ虫の仕業だ。幼虫が木のなかに巣くっているに違いない。
そこに居座り養分だけをチャッカリと吸い尽くしては、食い散らかした内部のおが屑を穴から外に放り出している。実には栄養が届かないワケだ。
 千枚通しの先を穴に刺して、グリグリと回してやっつけた。ホッとして眺めていると、幹の下の方で気持ちよさそうに合体中の雄雌が五、六カップル。ジーッとしているじゃないか。
 ルーペでよく見ると象の鼻のように曲がった口先の甲虫だ。コイツは固い幹にも穴を開けて、汁を吸ったりタマゴを生み付ける奴等に違いない。
 オレに気付いた何組かのカップルは、それぞれ慌てて上に下に逃げようとしている。交接部分に負担を掛けながら<愛の駆け引き>だ。そのうちどちらともなく地面に落ちて、まだくっついていた。
『このスケベ共め!!羨ましいぞ!』
原稿に戻ろうとして、ちょっと覗いた葉っぱの裏では、緑色の蜘蛛が甲虫を捕らえたところだった。また好奇に誘われしばらく眺めていると、ムシャムシャと頭から食い始めた。
オレのイチジクの木で繰りひろげられるスケベと殺戮。敷地内は雑草の大侵略がはじまっている。
オレの口に入るイチジクは残るのか。




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